Thunderbirdでメール送受信ができないときの原因切り分けと対処法

社内や店舗でThunderbirdを利用していて、さくらインターネットのWebメールでは送受信できるのに、Thunderbirdでは送信・受信ができないという事象に遭遇しました。
本記事では、その原因切り分けと対応方法をまとめます。

トラブル診断フローチャート

症状

よくあるエラーメッセージ

エラーの種類	メッセージ例	主な原因
送信エラー	SMTPサーバーに接続できませんでした	サーバー名・ポート番号の誤り
受信エラー	POPサーバーへの接続に失敗しました	暗号化設定の不一致
認証エラー	ユーザー名またはパスワードが無効です	パスワード変更未反映
タイムアウト	サーバーからの応答がありません	ネットワーク遮断

原因の可能性と確認ポイント

1. サーバー名の誤り

ポイント: 契約によっては、独自ドメインのサブドメイン経由ではSMTPやPOP接続ができない場合があります

正しい設定例

受信サーバー: pop.example.sakura.ne.jp
送信サーバー: smtp.example.sakura.ne.jp

よくある間違い

受信サーバー: subdomain.sakura.ne.jp  ← 独自ドメインはNG
送信サーバー: mail.example.com        ← 一般的な名前はNG

契約情報に記載されている正式なサーバー名を使用しましょう。

2. ポート番号と暗号化方式の設定表

サービス	暗号化方式	ポート番号	推奨度
受信 (POP3)	SSL/TLS	995	推奨
受信 (POP3)	STARTTLS	110	可
送信 (SMTP)	SSL/TLS	465	推奨
送信 (SMTP)	STARTTLS	587	可
送信 (SMTP)	なし	25	非推奨

暗号化方式とポート番号が正しい組み合わせになっているか確認します。

3. ユーザー名の設定

正しい設定と間違った設定の比較

項目	正しい	間違い
ユーザー名	user@example.com	user
形式	メールアドレス全体	@より前の部分のみ

メールアドレス全体をユーザー名として設定する必要があります。

4. 認証方式の確認

推奨設定

認証方式: 通常のパスワード
送信時の認証: 必要（受信と同じ認証情報を使用）

避けるべき設定

暗号化されたパスワード
OAuth2
認証なし

さくらインターネットでは「通常のパスワード」認証を使用します。

5. ネットワーク環境の確認

ブロックされやすいポート番号

ポート	用途	ブロック状況	対処法
25	SMTP（非暗号化）	多くのISPでブロック	587または465を使用
465	SMTP（SSL）	一部企業でブロック	587に変更して試す
587	SMTP（STARTTLS）	通常は開放	推奨
110	POP3（非暗号化）	セキュリティ上非推奨	995を使用
995	POP3（SSL）	通常は開放	推奨

一部のネットワークや回線では、465番ポートや25番ポートがブロックされる場合があります。スマホのテザリングや別回線で接続を試し、切り分けを行いましょう。

6. Thunderbirdのパスワードが古いまま

サーバー側でメールアカウントのパスワードが変更された場合、Thunderbirdにも新しいパスワードを登録する必要があります。

Thunderbirdでパスワードを更新する方法

手順（Windows/Mac共通）

Thunderbirdを開く
- 右上の「≡」メニューをクリック
設定画面を開く
- [設定] または [オプション] を選択
プライバシーとセキュリティ
- 左メニューから選択
保存されているパスワード
- [保存されているパスワード...] ボタンをクリック
古いパスワードを削除
- 受信サーバー（POP/IMAP）のエントリを選択 → 削除
- 送信サーバー（SMTP）のエントリを選択 → 削除
新しいパスワードを設定
- メール送受信を試みる
- パスワード入力画面が表示される
- 新しいパスワードを入力し「パスワードマネージャーに記憶する」にチェック

トラブルシューティングの手順

ステップバイステップ診断

ステップ	確認内容
1	Webメールでの送受信を確認
2	サーバー名が契約情報と一致
3	ポート番号と暗号化方式の組み合わせ
4	ユーザー名がメールアドレス全体
5	パスワードが最新のもの
6	別のネットワークで接続テスト
7	セキュリティソフトの一時無効化

クイック解決チェックリスト

最も多い原因TOP5

パスワードが古い → Thunderbirdのパスワードを削除して再設定
サーバー名の誤り → 契約書類を確認
ポート番号の間違い → 995(受信)、465(送信)に設定
ユーザー名の形式 → メールアドレス全体を入力
セキュリティソフト → 一時的に無効化して確認

まとめ

問題解決のルール

診断の基本

Webメールで動作確認（サーバー側 or クライアント側の切り分け）
エラーメッセージを正確に記録
設定を一つずつ確認

効率的な対処

送信と受信は別々に設定されている → 両方確認
パスワード変更は必ずThunderbirdにも反映
困ったら初期設定からやり直し

予防策

設定情報をメモに残す
パスワード変更時は全デバイスで更新
定期的な送受信テスト

Thunderbirdでメールが送受信できない場合、まずはWebメールで動くか確認し、動く場合はクライアント（Thunderbird）の設定を重点的に見直します。サーバー名・ポート番号・暗号化方式・認証方式・ユーザー名、そしてパスワード設定を一つずつ潰していくことで、多くのケースは解決できます。

それでも解決しない場合

新規プロファイルでテスト - Thunderbirdの別プロファイルを作成
別のメールクライアント - OutlookやApple Mailで試す
プロバイダーサポート - さくらインターネットのサポートに連絡
ログの確認 - Thunderbirdのエラーコンソールで詳細確認

ポイント

「送信」「受信」で設定が別々に保存されるため、両方の設定を確認すること
サーバー側のパスワード変更があった場合は必ずThunderbirdにも反映
切り分けは「別回線」「別端末」「新規アカウント追加」など段階的に行うと効率的

注意: この記事はさくらインターネットを例にしていますが、他のメールプロバイダーでも基本的な確認ポイントは同じです。契約しているプロバイダーの推奨設定を必ず確認してください。